天正年間の話です。
命令を受けた唐沢玄蕃は敵方の城へ偵察に行きました。
仕事を終えて、城を脱出しようとしたときです。
唐沢玄蕃は馬屋で足を止めました。
そこには立派な金の馬鎧を纏った馬がいました。
この「金の馬鎧」は関東管領が作らせた、この世に二つとない珍しい宝物でした。
次の日、城では
「金の馬鎧をつけた馬がいなくなった!」
と大騒ぎになりました。
それからしばらくして、埼玉県のとある城を攻略していた武田信玄の目に珍しい「金の馬鎧」が映りました。
信玄は真田信綱を呼んで訊ねました。
信玄「あの珍しい馬鎧の持ち主は何者だ?」
信綱「私の配下である『唐沢玄蕃』でございます。」
こうして唐沢玄蕃は思いもよらない所で名を馳せることができたのでした。
****
後日談
真田信之が大戸の仙人窟に陣をしいて北条家と戦った時の話です。
唐沢玄蕃はことのきも金の馬鎧を馬につけて戦っていました。
馬鎧があまりにピカピカと目立つため、北条方の兵に
「あの目立つのが大将であるに違いない!」
と狙われたそうです。
~~~~~~~~~~~加沢記より訳~~~~~~~~~~~~~