矢沢頼綱が沼田城の城代であった天正10年10月の事です。
その頃、矢沢頼綱は沼田城を攻めてきた北条氏邦と戦っていました。
沼田城で篭城をしていた頼綱は、北条軍へ夜討ちを掛けることにしました。
味方には紙の羽織をきせて、合言葉を「天」「気」と定めました。
頼綱は700騎を引き連れて敵の陣に近づき、
「時は良し。」
と愛用の槍『小松明』を握ると、『小松明』は本物の松明のように光り輝き矢沢頼綱の姿を見えなくしてしまいました。
矢沢頼綱からは、相手の様子がはっきりと見えました。
一時間ほどの間に敵は総崩れとなり、北条軍はやっとのことで退いたのでした。
さて『小松明』という槍の由来を訪ねたところ、矢沢頼綱は詳しく語ってくれました。
「自分の父である海野棟綱の時代には信濃の虚空蔵山に鬼神が住んでいて人民を悩ませていたそうだ。その時に父は鬼神討伐に向かったのだが、とても人間の叶う相手ではない。そこで水内八幡宮へ願いたてをしてこの槍を授かった所、不思議な事に夜中に槍が松明に変わり鬼神を平らげることができたのだ。
自分が13歳の時に村上義清との合戦があった。この小松明はその時に父から
『まだまだ若いのに初陣なのだから素晴らしい剣を与えよう。』
と言われていただいたものなのだ。」
この話を聞いた人々は不思議なこともあるものだとこの槍をおそれ敬ったのでした。
~~~~~~~加沢記 小松明の由来より訳~~~~~~~~~